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2024.05.08

令和5年度老人保健事業推進費等補助金 高齢住民における認知症および軽度認知障害の有病率調査の結果を報告しました

(報告書の概要)

本事業では、2022-2023年度にわが国の6地域(福岡県粕屋郡久山町、石川県七尾市中島町、島根県隠岐郡海士町、愛媛県伊予市中山町、岩手県矢巾町、大阪府吹田市)の65歳以上の住民約 8,617人を対象に認知症および MCI の有病率の地域悉皆調査を実施した。認知症者を洩れることなく評価するために、会場調査に加え自宅や入居施設の訪問調査も実施した。認知症およびMCI調査について当該自治体および住民への周知を行い、調査を開始した。
認知症およびMCIの診断は、2段階方式で行った。調査対象者に神経心理学的検査を用いた認知機能に関する面接調査(一次調査)を施行した。面接調査はトレーニングを受けた医師・保健師・看護師・心理士が実施した。一次調査では、Mini-Mental State Examination (MMSE)を用いて認知機能低下の有無のスクリーニング調査を行い、認知機能低下が疑われる者に対しては、精神科・脳神経内科専門医による二次調査を行い、本人の診察、家族・主治医との面接、臨床記録、Logical memory IIa subscale of Wechsler Memory Scale-Revisedの結果を通じて認知症およびMCIの有無と重症度を評価した。認知症とMCIの診断基準にはそれぞれDSM-ⅢR、Petersenの基準(Petersen RC et al, Neurology, 2001)を用いた。本事業では、これらの調査成績を基に、認知症およびMCI の有病率年齢階級別有病率を算出し、わが国の人口分布を用いてわが国の認知症およびMCI の罹患者数を推計した。

その結果、2022-2023年度に調査率80%以上の認知症の地域悉皆調査を実施した4地域(福岡県久山町、石川県中島町、愛媛県中山町、島根県海士町)において、認知症の有病率(性年齢調整後)は12.3%であり、2012年の厚生労働省より報告された認知症有病率15%と比べ低値であった。また、これらの4地域におけるMCIの有病率(性年齢調整後)は、15.5%であった。さらに、2022年の認知症およびMCIの性年齢階級別有病率が今後も一定と仮定した場合、2050年のわが国の認知症者数は586.6万人、MCI者数は631.2万人と推計された。2012年の厚生労働省より報告に比べ低下傾向をみとめ明確な理由は必ずしも明らかではないが、喫煙率の全体的な低下、中年期~高齢早期の生活習慣病管理の改善、健康意識の変化による影響の可能性が考えられる。

令和5年度老人保健事業実施計画書
令和5年度老人保健事業報告書
 

九州大学大学院 医学研究院

衛生・公衆衛生学分野

〒812-8582
福岡市東区馬出3-1-1

TEL:092-642-6151
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