ご挨拶

Greeting

研究代表者からのご挨拶

認知症の新たな危険因子および防御因子を同定し、
認知症の予防・治療法の開発に貢献致します。

九州大学大学院医学研究院 衛生・公衆衛生学分野 教授 二宮 利治

わが国では、高齢人口の急速な増加に伴い認知症を有する高齢者が急増しています。その対策に要する膨大な社会的・経済的コストは地域社会の衰退をもたらし、わが国の社会保障制度の根幹を揺るがすことにつながると危惧されています。そのため、予防、治療、介護を含めた総合的な対策を講じて認知症患者の増加に歯止めをかけてそのコストを軽減することは、わが国の医療行政における焦眉の課題です。この急増する認知症を予防しその治療法を開発するには、大規模認知症コホート研究によって認知症の危険因子・防御因子を同定するとともに、それに最新の生命科学の研究手法を用いて生み出される知見を融合させて認知症の病態を解明することが不可欠です。そこで、日本医療研究開発機構・認知症研究開発事業の指定研究として「健康長寿社会の実現を目指した大規模認知症コホート研究: Japan Prospective Studies Collaboration for Aging and Dementia (JPSC-AD)」を企画しました。

本研究では、全国8地域(青森県弘前市、岩手県矢巾町、石川県中島町、東京都荒川区、島根県海士町、愛媛県中山町、福岡県久山町、熊本県荒尾市)に在住する65歳以上の地域高齢者約1万人の方々を対象とした認知症調査を行い、その後前向き追跡調査を実施します。調査開始に際し、調査項目、検査方法、追跡調査の方法、疾患の診断基準を事前に標準化し、コホート間のデータの精度を均一化することに努めました。このように、各地域のコホート研究で収集された個人別データを匿名化後に統合します。さらに、従来型の環境因子のコホート研究に、新たなゲノム・オミックス情報などの基礎研究の知見や頭部MRI画像データを積極的に活用することにより、認知症の病態解明を目指します。その他に、わが国の既存の認知症コホート研究の疫学データや画像データを統合する研究(0次研究)も行います。これらの研究を推進することにより認知症の新たな危険因子および防御因子を同定し、認知症の発症リスクの予測モデル、診断マーカー、予防・治療法の開発に貢献したいと思います。
本研究の推進に、皆様のご理解とご支援を賜りますようお願いいたします。