方法(計画 プロトコール)
検討内容
- (1)生活習慣や基礎疾患および社会心理学的背景などの諸要因が認知症およびうつ病発症に及ぼす影響の検討
- (2)遺伝性因子が認知症およびうつ病発症に及ぼす影響を環境因子による相互作用を考慮した検討
- (3)認知症およびうつ病発症に関与する新たなバイオマーカーや治療ターゲットとなる因子の探索
調査対象
全国8地域(青森県弘前市、岩手県矢巾町、石川県中島町、東京都荒川区、島根県海士町、愛媛県中山町、福岡県久山町、熊本県荒尾市)における65歳以上の地域住民約10,000人(図2)
スクリーニング調査項目
以下の項目について、全国8カ所の調査地域で統一した標準調査票(調査カルテ)を用いて調査
- (1)問診
- (2)神経心理学的検査
- (3)身体所見
- (4)検尿
- (5)血計
- (6)血液生化学検査
- (7)長期保存検体
- (8)頭部MRI検査(一部地域)
認知症およびうつ病の診断方法
認知症およびうつ病の診断は二段階方式で行います。調査対象者に神経心理学的検査を用いた認知機能とうつ病に関する面接調査(一次調査)を施行します。さらに、認知症あるいはうつ病が疑われる者に対しては、精神科・神経内科専門医による二次調査を行い、本人の診察、家族・主治医との面接、臨床記録の調査、頭部画像所見などを通じて認知症およびうつ病の有無、重症度、病型を評価します。
主要評価項目(エンドポイント)
以下の評価項目の発症情報について追跡調査を行います。
- (1)認知症(AD、血管性認知症など病型診断を含む)発症
- (2)認知機能変化
- (3)うつ病発症
- (4)心血管病(脳卒中、虚血性心疾患)発症
- (5)全死亡および死因別死亡
追跡調査
以下のシステムを用いて認知症やうつ病、心血管病の発症および死亡の追跡調査を行います。
- (1)毎年の健診にて追跡対象者の健康状態、イベント発症の有無を確認する。
- (2)対象者が健診を受診しない時や当該地域から転出した時には、手紙や電話による調査や訪問調査を行う。
- (3)対象者に手紙が届かない時や電話で連絡がつかない時は、対象者が居住する地域の役場に住所照会を行い、居住場所の確認を行う。
さらに、判明した住所に再度手紙や電話による調査を行う。
- (4)エンドポイントの発症が疑われた場合は、本人・家族の問診および診察、病院への照会、カルテ情報や画像情報の収集を行い、詳細な臨床情報を入手する。
- (5)厚生労働省の人口動態統計の目的外使用の申請を行う。
臨床データの収集・管理
ネットワークセキュリティーが完備され、データ入出力、修正に伴う操作ログを常に記録することが可能な広域ネットワークデータ管理システムを用いて、各地域から中央事務局へのデータ収集を行います(図3)。
図3. VPNを用いた広域ネットワーク管理システム
- 本システムの特徴
- ・チェック・ポイント社のエンドポイントセキュリティを用いたリモートアクセスVPNによってデータベースに接続する。
- ・VPN接続中は、他のネットワーク接続を無効化し、通信データを暗号化するなど秘匿性の高い通信を行う。
- ・作業履歴保存による改ざん防止
- ・Webアプリケーション上でJavaスクリプトを用いた入力規制による入力支援、入力ミス防止
- ・健診データの個別と一括入力の両方に対応
生体試料の管理
各コホートで収集される生体試料(血清、血漿、DNA)は、複数本数に分注し、各参加施設と中央事務局で超低温フリーザ(-80℃)にて管理します。
既存コホートデータの統合研究(0次統合研究)
福岡県久山町、石川県中島町、島根県海士町、愛媛県中山町では、地域高齢住民を対象とした認知症のコホート研究が既に実施されています。本研究では、0次統合研究を継続し、認知症発症の危険因子を検証します。
倫理面への配慮
研究開発代表者および分担者の所属機関は、認知症の疫学調査の調査地域を選定する際に各調査自治体と住民の理解を得るように努めます。本研究課題では、作成される大規模認知症コホート研究の標準作業手順は、文部科学省・厚生労働省より公表された「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」と「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」に則ります。